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author:すなっふ

田舎者から東京都民になりました。
「unsnuff」という名義で、ソロで音楽活動をしています。
が、音楽活動の宣伝はTumblrに移行しましたので、このブログでは音楽活動に関係のない内容(好きな音楽や映画のレビューなど)についてゆるりと書いていきたいです。

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フジファブリック

「桜の季節」のPVを見たとき、衝撃が走った。ああ、すごいバンドが現れたな、と思った。メロでのファンクなノリと、サビでのせつないメロディー。ピアノとカッティングギターの美しい絡み合い。その展開力と世界観。アンダーグラウンドな邦画のようなPVも相まって非常に感動したあの感覚を、僕は今でも覚えている。

このアルバムはそんな、メジャーデビュー当時の「フジファブリック」というバンドの魅力が詰め込まれた一枚である。また、これ以降アルバムを出すごとに変容していく彼らの、インディーズまでの世界観を完成させたアルバムでもあるだろう。

当時の彼らはとても気持ちが悪い。突然の転調や、変拍子、曲調変化、古めかしい言葉づかい…どこか奇をてらっているかのような楽曲たちに故・志村のドロドロした歌い方も重なり、お世辞にも一般受けはしなさそうな、変態的なサウンドを展開させている。「追ってけ追ってけ」「TOKYO MIDNIGHT」は完全に変態的な楽曲だし、「打ち上げ花火」は静と動の変化がめまぐるしいプログレな一曲だ。
その気持ち悪さはなんだか、日本近代文学の、あの匂いまで立ち込めてきそうな泥臭さに似ている。淡々としながらも狂気的で、人物の毛穴まで見えてきそうな、あの気持ち悪い雰囲気に似ていると思うのだ。僕はこのサウンドを日本近代文学的プログレッシブと名付けたい。

しかし静かで抒情的な楽曲もある。「陽炎」「赤黄色の金木犀」は切なく、心にしみる名曲であるし、「花」ではギターとハーモニカが静かに美しく響き、「夜汽車」は抒情的な感傷を誘う。これもまたどこか昭和の雰囲気を漂わせ、その風景を浮かばせるような楽曲たちである。

このアルバムはその変態的な楽曲と静かで美しい曲とのバランスがちょうどいい。また10曲というボリュームもちょうどいい。
そしてアルバム全体を通して感じる、昭和的な美しさとドロドロした気持ち悪さ。その唯一無二の世界観がこのバンドの魅力であり、それがこの一枚に完成されている。このアルバム以降はバンドとしてさらに洗練されていくのだが、この独特の雰囲気はそこなわれていく感じがある。まさにここがフジファブリック初期衝動の完成形であり、セルフタイトルにふさわしい一枚であると思う。

| すなっふ | - | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
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